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野菜に含まれる硝酸イオンの問題


2010年06月09日

播州農機販売 営農相談室

野菜に含まれる硝酸イオンの問題

1 硝酸イオンによる汚染

1. 野菜に含まれる硝酸イオン
 現在流通している野菜は葉菜を中心に高濃度の硝酸イオンを含有しているとされ、これまでに機関が調査した中には最高値16,000mg/ kg報告されています。最近、葉菜は4,000~8,000mg/kg(4~8g/㎏)の高濃度の硝酸イオンで流通しているとされます。

2. 井戸水(地下水)に含まれる硝酸イオン
WHO及び日本における飲料水に含まれる硝酸イオンは10mg/L以下としています。
英国では1970年で11.3㎎N/L(WHOの国際基準)を超えていたのは60井戸であったのに対して、1980年には90井戸、1987年には142井戸と硝酸性窒素汚染が進行していると報告されています。また、英国で地下水を飲料にしていた地域で、子供達が「Ⅰ型糖尿病」になったという報告もされています。
日本においても地下水の硝酸性窒素汚染の報告例は多くあるといいます。1997年に環境庁行った調査では、6.5%で指針値(10㎎N/L)を超えていたと報告されています。野菜や飼料畑の近くの地下水を飲料にされていると硝酸イオンの測定が必要です。
窒素肥料の多投は、河川、地下水を汚し、廻りまわって私たちの命を脅かすことになります。

3. 硝酸イオンの人体への影響

硝酸態窒素が体内で毒性の強い亜硝酸Naとなり、蛋白質・アミノ酸と結合しさらに強力な発がん性を持つニトロアミンを形成するといいます。また、硝酸態窒素は血液中でヘモグロビンと結合し中毒(酸素欠乏症)を引き起こすといいます。米国で高濃度のホウレンソウの裏ごしを赤ちゃんの離乳食として与えたところ、真青になって亡くなったという事故が報告されています。
WHOの見解は成人(体重60kg)の1日当たり摂取限界を300mg以下としています。健康のため葉菜を1日200g、人によっては300g摂取するのがよいと言います。葉菜の硝酸イオン濃度が4,000mg/kgでも、200g食べると800mg摂取することになります。同じ濃度で100gでも葉菜を食べると、400mg摂取となり摂取限界を超えてしまいます。野菜に含まれる硝酸イオンは1,000mg/kg以下が望まれます。

2 植物体内の硝酸動態

植物は、土中にある硝酸(畑作作物は殆どアンモニアを吸収しない。)を根から吸い上げ、亜硝酸、アンモニアと還元し、最終にはアミノ酸を生成します。葉内で硝酸還元酵素の働きがスムーズに行われると問題はありませんが、植物は土中にある硝酸を悉く吸い上げ、葉に貯める性質があり、葉に硝酸濃度は高まることになります。すると葉は軟弱になり、病害虫に侵され安く、商品になる葉菜では、傷みやすく、食べると苦味が残り、硝酸イオンを多く摂取することになります。土中では好気性菌の亜硝酸菌がアンモニアを亜硝酸に変え、その亜硝酸を硝酸菌が硝酸に変え(硝化作用という。)、その生成された硝酸を悉く吸収してしまいますので、この硝化作用を抑制するか、窒素肥料を控えるかの工夫が必要です。石灰窒素に含まれるジシアンジアミドが土中に有るアンモニアの硝化作用を数週間抑制する働きがあります。葉菜では元肥に石灰窒素を使うのも、低硝酸化葉菜生産の技術といえるでしょう。植物体内では硝酸還元酵素により硝酸は亜硝酸へと変化し、その後アンモニアとなります(硝酸の還元)。そのアンモニアは、光合成生産物と共にアミノ酸へと合成され、植物が体を作る材料となります。光合成が活発に行われると、硝酸の分解(還元)が進み、アミノ酸が増加します。そのため、硝酸イオン低減のためには硝酸の吸収量を抑制したり、硝酸の還元を促進することがポイントになります。

3 結球葉菜類の重要ポイント(キャベツ、白菜)

1.低硝酸品種の導入

 (キャベツ) 春・初夏獲りでは、春系より寒玉(冬)系が低い。品種では、「長野中生SE」など。ちりめんキャベツ等は中間の傾向。年内獲りでは寒玉系より、春系が低い。

 (白菜) 年内獲りでは白芯系が低い。黄芯系でも品集により差があります。


2.窒素施用量の削減

1.堆肥などの有機物を施用する場合は、窒素量を勘案して施肥量を削減します。

堆肥の過剰施用は、硝酸が高くなるので、2~3t/10aを上限とします。施用後に短期間(1ヶ月程度)で定植する場合は、施肥窒素量を削減します。

2.硝酸を減らすために窒素量を削減します。

施肥窒素量の上限は30kg/10aとします。元肥は石灰窒素を利用し、元肥窒素施用量はキャベツ20kg(石灰窒素では100kg)/10a、白菜15kg(同75kg)/10a程度を目安にします。

3.結球期後半の窒素吸収抑制

1.追肥は、結球期後半までに肥効が低下するように調整します。最終施肥時期が早いほど、硝酸イオンは低くなります。

2.追肥窒素量は、10kg/10aまでとします。

3.終の追肥は、早めに施用します。最終の追肥は、収穫30日前を目安に、窒素施用量5kg/10a以内を基本とします。

・光合成の促進による硝酸の還元促進

1.苦土(Mg)には光合成に必要な炭酸ガス(CO)を固定する役割があり、不足すると太陽の光を受けても光合成がされなくなり、光合成に利用されない光エネルギーは葉緑素の破壊に使われクロロシス(白斑=葉焼け)起こすことがあります。この対策にはアクアグリーン(苦土肥料)15kg/10aなどを施用します。

2.モリブデンの葉面散布により硝酸を低減します。収穫9日前までにモリブデン(Mo)50ppmを展着剤混用の上、葉裏にも十分かかるように葉面散布すると効果があるようですが、Moを含む葉面散布剤では含有量が少なく、50ppmの液作りは無理なので、モリブデン単体を購入して使用になります。

・収穫時期や収穫後の調製

1.日照不足では、硝酸の蓄積が進むので、晴天が続き硝酸の還元が進んだ後で収穫します。結球期以降に硝酸濃度が低下していくので、収穫をやや遅らせます。

2.硝酸還元酵素活性と硝酸濃度は変動

 硝酸濃度は朝が高く、硝酸還元酵素活性は日中に高くなります。日照不足では、硝酸の蓄積が進みます。特に、白菜など水分に硝酸が影響されます。そのため植物体内の水分が減少し乾物率が高くなると、硝酸が高くなります。

3.結束時期を遅らせて硝酸を低減します。

白菜は、結束することにより硝酸の蓄積が進むので、出きる限り遅く結束します。

4.収穫後の調製により硝酸を低減します。

消費にあたっては、調製後のキャベツ結球葉外側2枚程度を除去します。年内獲りキャベツでは、結球葉の外側ほど硝酸が高いため、特に硝酸の高い時期には2枚程度結球葉を除去します。

4 低硝酸コマツナの栽培

1.元肥窒素施用量 高温期 0~5kg/10a (石灰窒素0~25kg)
            低温期 5~10kg/10a (〃  25~50kg)

2.尿素の散布

 尿素は葉より吸収し、硝酸の経路を通ることなく、アンモニア、アミノ酸生成になりますので、硝酸の葉への集積は行われません。
本葉2~3枚展開時、本葉7~8枚展開時の2回、尿素の葉面散布を行います。尿素は、水で200倍液に薄めて散布します。
 散布量は、1回目100~150L、2回目200~300L/10aとします。

3.収穫・調製

 さらに硝酸イオン濃度を減らすためには、収穫・調製に際して、以下のことに留意します。ポイントは十分に太陽光に当てることです。

1.収穫の数日前には、害虫除けネットなどを除去し、十分に光をあてます。
2.収獲作業は、晴れた日の夕方に行います。
3.収獲は、出荷規格の範囲内で、出きるだけ大きい状態になったときにする。
4.調製時に第5葉程度の下位葉を除去します。

5 色の濃い野菜を食べるときの注意

・茹でて、汁が黄色くなったら、毒はほとんど溶けだしてしまいますから大丈夫です。
・キャベツやレタスで妙に苦いのがあったりしませんか。その場合は食べない方が無難です(苦くても少量なら問題になりません)。

 以上、葉菜の硝酸含量の低いものを食べることが大切で、特に免疫力の低下しやすい高齢者は十分注意したいものです。